生きた味を詰め込んで

わたしたちの蔵の「手づくり寒仕込み 天然熟成醸造味噌」は、基本的にスーパーの陳列棚には置かれておりません。蔵でできた味噌をそのままパック詰めするので、常温の陳列棚に並ぶと発酵を続けて容器が膨らんでしまうからです。加熱したり酒精を加えたりすれば、発酵が止まり膨らむ心配もなくなります。けれど、本来の味噌は原材料である米と大豆と塩が発酵することでうま味を増します。大事な発酵を止めたくないので、わたしたちは今まで蔵に併設した店舗や地元スーパーの冷蔵棚など限られた場所で販売していたのですが、それが大変好評で、このたびクール便でお届けできるインターネット販売も始めました。生きた味を詰め込んで

基本の麹づくりが正念場

実は、わたしたちは「手づくり寒仕込み 天然熟成醸造味噌」のほかに、料亭やご家庭のオーダーメイド味噌も作っています。昔は、どこの家庭でも味噌を作っていて、家庭の数だけ味噌の味があり、祖母が作った味噌の味を母や娘が受け継いでいました。けれど今は、体力や時間がないため味噌作りができなくなった奥様が増えました。そこでわたしたちは個人のお客様から注文を受けて、その家庭独自の味を再現しています。これも、麹さえしっかりと作っておけば、あとは長年培った勘で大豆と塩の配合を変えるだけ。わたしたちにとっては特別なことではありません。
味噌の麹は、蒸した米を莚(むしろ)の上に広げ、人肌くらいの温度になるよう冷ましながら手作業で揉みます。米の表面をこすり合わせるようにしっかりと揉み、表面にキズができて麹菌が付着しやすくなったところで味噌の麹菌を加え、醤油と同じように室(むろ)の中に移せば発酵が始まります。途中、「手入れ」といって適温を保つために手でかき混ぜるのですが、ここが正念場。ここでしっかりと手入れをすれば本当にいい麹ができあがるので、わたしたち夫婦は麹菌で全身をまっ黄色に染めながらひたすら、丁寧に、作業をします。

基本の麹づくりが正念場

食卓で伝えたい、発酵食品の素晴らしさ

そうしてできた米麹と蒸した大豆、塩水を合わせ、杉樽で1年間寝かしたものが「手づくり寒仕込み 天然熟成醸造味噌」です。クセがなくうま味が強いので、味噌汁はもちろん、味噌だれなど幅広くお使いいただけます。
わたしたちの蔵では、この「天然熟成醸造味噌」に徳島産の柚子果汁を合わせ、「柚子味噌」を販売しています。柚子味噌というからには柚子の風味をしっかりと際立たせたいので、果汁をたっぷり使った爽やかな味噌に仕上げました。比較的サラッとしているので、そのまま和え物やソースに使えます。また、「回鍋肉(ホイコーロー)の素」は、天然熟成醸造味噌に本醸造醤油、豆板醤を合わせた便利ソースで、肉や魚に下味をつけないまま調理して本格的な中華の味が再現できる優れものです。
どの商品もベースは味噌と醤油、さらには、うま味の基本となる麹です。これからも昔ながらの製法を守り、蔵の味、そして発酵食品の素晴らしさをお伝えしていきたいと思います。
4代目 濱晃博・眞理子

食卓で伝えたい、発酵食品の素晴らしさ